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仙台高等裁判所 昭和27年(ラ)42号 決定 1953年1月30日

抗告人 岡ミヨ

相手方 岡トメ

事件本人 岡美子

右後見人 小田夏子

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、

抗告人は事件本人である未成年者岡美子の亡父正之の実母で、美子の祖母であるが、美子の実母である相手方は抗告人の申立により盛岡家庭裁判所一関支部において昭和二十四年五月六日不行跡の故を以つて未成年者美子の親権喪失を宣告せられ未成年者美子の後見が開始したところ、相手方は盛岡家庭裁判所一関支部に対し不行跡改善したと主張して失権取消の申立をなし、同裁判所は昭和二十七年八月二十五日相手方の申立を認容して失権取消の宣告をした。

一、しかし相手方の不行跡はいまだ改善せられないのみならず、乱業ますます甚だしいものがあり失権を取消すべき時期ではない。

二、殊に原裁判所は、失権取消の審判をなすに当り、親権喪失の申立人たる抗告人の意見を聴かないのみならず、事件本人の父方である岡家の意見は一人もきかず、申立人岡トメ側の意見のみを採用した結果事実を誤つた審判をしている。

よつて原審判を取消されたいというのである。

按ずるに親権喪失の宣告を取消す審判事件については、親権者の指定に関する審判事件に準用せられる家事審判規則第五十四条のような規定がないから、その審判をする前に親権喪失の申立人又はその他の特定関係人の陳述を聴かなければならないものではない。

要は事実の真相を把握するに足りる資料を蒐集し、適正妥当な審判をすれば足りるのである。而して原審証人佐田一平、大場一雄、伊東甚作、大場太郎の各証言によれば、相手方岡トメは夫正之死亡後の昭和二十三年九月頃近所の伊東甚作と情交を結んだ結果姙娠したため、昭和二十四年四月初め頃婚家である抗告人方を家出し、同月末頃死胎児を流産したこと、同月末頃佐田一平、大場一雄等の取りなしで婚家に帰り、伊東甚作との関係を絶ち農業に励んでおり、伊東甚作の妻が嫉妬心の余り、相手方と伊東甚作との関係が継続しているようなことを云い振らしたこともあつたが、さような事実は全く虚偽であることが認められ、これに反する資料はない。

従つて原審判に抗告人主張のような事実の誤認はなく相手方の失権取消の申立を認容した原審判は相当で、本件抗告は理由がない。

よつて家事審判法第七条、非訟事件手続法第二十五条、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条に則り、主文のとおり決定する。

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